今回は、めちすけが経験したTAの、具体的な仕事内容について思い出してみます。
めちすけが6年間、一貫して受け持っていたのは、学部2年-3年生向けの流体力学
の講義でした。流体力学というのは、モノの回りの流れ(空気でも水でもいいです)を、
物理と数学を使って解く学問です。それが何に使われるのかというと、例えば水の中を、
出来るだけ水の抵抗を受けずに航走する船を造ったりする時に、非常に役に立つ学問
です。
この科目は、日本の大学で言うところの"必須科目"で、落とすと確か進級できないか、
卒業できないかでした。なので当然、受講する学生の数も多かった。多い時で、100名
近くいたんじゃないだろうか。
1年目:
TAのポジションを貰えたはいいものの、めちすけはまだ渡米して3ヶ月程度しか経って
いません。教授もそれを十分分かっていたため、めちすけに最初に与えられたTAの
タスクは、
・宿題の採点
・オフィスアワー
でした。宿題の採点では、学生が出してきた宿題を、grading criteria(採点基準)に沿って
採点していきます。grading criteriaは、head TAという所謂TAのボスみたいなのが作り、
それに沿って採点します。こうすることで、別々のTAが同じ宿題を採点しても、点数に差が
出ない。宿題の点数も自分の成績の一部となるので、学生にとってはシビアです。
日本だとあまり考えられませんが、宿題の採点に不満がある、とTAの元を訪れる学生も
いるくらい。
オフィスアワーでは、週の決められた時間(2日間程度、それぞれ2時間くらい)、TA専用
の部屋に詰め、そこで学生の質問に答えていきます。大体の質問が、宿題に関すること
なのですが、授業のここが分からん…という質問もあり、気が抜けません。
ここで、一応マンツーマンでなら、学生の質問にも答えられるようになるトレーニングを
受けた感じでした。
当時めちすけは学部卒業したてだったので、質問に来る学生さんと歳が一番近く、英語が
あまり話せないにも関わらず、なんだか仲良くなった覚えがありました。
教授、最初は心配だったんでしょうね。
僕がTAをしている横で、教授が見てるんです。
ならお前が教えろよと思っていましたが、そこはさすが教育者。
任せることも大事…と思い、敢えて手を出さなかったんだと思います。
彼は研究者としてだけでなく、教育者としても間違いなく一流です。
今、自分が準教授くらいの歳になって、改めてそう思い直しているところです。
2年目:
1年目でオフィスアワーを経験し、2年目からはそれに加え、Lab Assistantという仕事も
加わりました。簡単に言うと、授業の一環で学生に行わせる実験の手伝いをする、という
もの。この頃になると、少しだけ気持ちにも、悪い意味で余裕が出てきてたんでしょうね。
学生のバカな質問には、あまり答えなくなっていました。
書いてあるだろ、教科書もう1回読んでみろよ、とか。
でも、本当は答えてあげなくてはいけなかった。それでお金を貰ってましたからね。
反省点が多い1年でした。
3年目-4年目:
この頃になると、めちすけも博士課程に入っていて、それなりに英語も話せるようになって
いました。なので、授業(といっても、学生実習セクションですが…)のコマを任せて貰える
ようになりました。実は、これがきつかった。
100人程度の学生を、何グループ化に分けて、1日中実習をやらせるのです。
めちすけが担当した実習は、Introduction to Computational Fluid Dynamics (CFD)という
セクションです。パソコンを使って、流体力学の問題(例えば2次元翼回りの流れ等)を
解かせ、その考察等をレポートにまとめ提出させます。
当然、学生数分のレポートが出されますし、中にはパソコンがあまり得意ではない子も
居て、1日終わると(朝9時から昼食を挟み、晩の6時半くらいまで喋りっ放しです)、喉は
カラカラ、とてつもない徒労感で、それから自分の宿題等をやらなければいけなかったので、
憂鬱でした。8月後半-12月中盤までの辛抱だと思って、耐えていました。
でもそのおかげで、ある程度長い時間話さなければならない状況(集中講義とか)への
耐性が付きました。
しかし、教科書選びや中間テストの問題作成に携わったり、意見を求められる機会も増え、
この頃から"授業を一緒になって作り上げている"感覚が芽生えたことで、やれることは
しっかりやろうという意識に変わってきた覚えがあります。
ちなみに、使用する教科書は6年間で3冊変えました。
1つの教科書ばっかりつかうとマンネリ化しますし、学生の間にも"Solution manual"(虎の巻)
が出回ってしまって、出席してないのに何故か宿題だけ全提出&100点!という輩が
存在してしまうからです。
3冊扱いましたが、日本の流体力学の教科書より全然分かりやすいです。
以下、紹介します。1.および2.がお勧めで、修士課程程度までなら、これで十分です。
1.Fluid Mechanics: Fundamentals and Applications
説明図や式展開も詳細で、かつ説明文も非常に分かりやすい名著だと思います。
初学者から、実務に携わる人まで、これ1冊でかなりのとこまでは理解できます。
ただ、うちの教授はこの本嫌いでね…早々に変えてしまいました。
2.Engineering Fluid Mechanics
この本も、なかなか良いです。機械工学系の本にしては珍しく、浮体静力学の話も一応
カバーしてあります。ただ、問題演習の解説が若干淡白で、不親切に感じるところもある
かもしれません。
3.Fundamentals of Fluid Mechanics
うちの教授は、えっらく気に入ってましたが、個人的にはダメダメです。
何がダメって、まず教科書のコンテンツの並びがダメ。
この順番で教えても、学生の理解は深まらんでしょ、混乱するだけでしょ…という並びに
なってしまっています。説明も、1.に比べたら雲泥の差で不親切。
演習問題も、何だかマニアックすぎて意味分かりません。
アメリカの教科書は一般的に、非常に親切で分量が多い。
なぜかというと、自習を前提にして作られているからです。
自習してきて、分からない部分を授業で復習する。授業は、自習前提で始まる。
だから、分かる奴はどんどん伸びるし、やってこない奴はガンガン落ちこぼれます。
よいシステムです。
日本も、そうすればいいのに。
めちすけが6年間、一貫して受け持っていたのは、学部2年-3年生向けの流体力学
の講義でした。流体力学というのは、モノの回りの流れ(空気でも水でもいいです)を、
物理と数学を使って解く学問です。それが何に使われるのかというと、例えば水の中を、
出来るだけ水の抵抗を受けずに航走する船を造ったりする時に、非常に役に立つ学問
です。
この科目は、日本の大学で言うところの"必須科目"で、落とすと確か進級できないか、
卒業できないかでした。なので当然、受講する学生の数も多かった。多い時で、100名
近くいたんじゃないだろうか。
1年目:
TAのポジションを貰えたはいいものの、めちすけはまだ渡米して3ヶ月程度しか経って
いません。教授もそれを十分分かっていたため、めちすけに最初に与えられたTAの
タスクは、
・宿題の採点
・オフィスアワー
でした。宿題の採点では、学生が出してきた宿題を、grading criteria(採点基準)に沿って
採点していきます。grading criteriaは、head TAという所謂TAのボスみたいなのが作り、
それに沿って採点します。こうすることで、別々のTAが同じ宿題を採点しても、点数に差が
出ない。宿題の点数も自分の成績の一部となるので、学生にとってはシビアです。
日本だとあまり考えられませんが、宿題の採点に不満がある、とTAの元を訪れる学生も
いるくらい。
オフィスアワーでは、週の決められた時間(2日間程度、それぞれ2時間くらい)、TA専用
の部屋に詰め、そこで学生の質問に答えていきます。大体の質問が、宿題に関すること
なのですが、授業のここが分からん…という質問もあり、気が抜けません。
ここで、一応マンツーマンでなら、学生の質問にも答えられるようになるトレーニングを
受けた感じでした。
当時めちすけは学部卒業したてだったので、質問に来る学生さんと歳が一番近く、英語が
あまり話せないにも関わらず、なんだか仲良くなった覚えがありました。
教授、最初は心配だったんでしょうね。
僕がTAをしている横で、教授が見てるんです。
ならお前が教えろよと思っていましたが、そこはさすが教育者。
任せることも大事…と思い、敢えて手を出さなかったんだと思います。
彼は研究者としてだけでなく、教育者としても間違いなく一流です。
今、自分が準教授くらいの歳になって、改めてそう思い直しているところです。
2年目:
1年目でオフィスアワーを経験し、2年目からはそれに加え、Lab Assistantという仕事も
加わりました。簡単に言うと、授業の一環で学生に行わせる実験の手伝いをする、という
もの。この頃になると、少しだけ気持ちにも、悪い意味で余裕が出てきてたんでしょうね。
学生のバカな質問には、あまり答えなくなっていました。
書いてあるだろ、教科書もう1回読んでみろよ、とか。
でも、本当は答えてあげなくてはいけなかった。それでお金を貰ってましたからね。
反省点が多い1年でした。
3年目-4年目:
この頃になると、めちすけも博士課程に入っていて、それなりに英語も話せるようになって
いました。なので、授業(といっても、学生実習セクションですが…)のコマを任せて貰える
ようになりました。実は、これがきつかった。
100人程度の学生を、何グループ化に分けて、1日中実習をやらせるのです。
めちすけが担当した実習は、Introduction to Computational Fluid Dynamics (CFD)という
セクションです。パソコンを使って、流体力学の問題(例えば2次元翼回りの流れ等)を
解かせ、その考察等をレポートにまとめ提出させます。
当然、学生数分のレポートが出されますし、中にはパソコンがあまり得意ではない子も
居て、1日終わると(朝9時から昼食を挟み、晩の6時半くらいまで喋りっ放しです)、喉は
カラカラ、とてつもない徒労感で、それから自分の宿題等をやらなければいけなかったので、
憂鬱でした。8月後半-12月中盤までの辛抱だと思って、耐えていました。
でもそのおかげで、ある程度長い時間話さなければならない状況(集中講義とか)への
耐性が付きました。
しかし、教科書選びや中間テストの問題作成に携わったり、意見を求められる機会も増え、
この頃から"授業を一緒になって作り上げている"感覚が芽生えたことで、やれることは
しっかりやろうという意識に変わってきた覚えがあります。
ちなみに、使用する教科書は6年間で3冊変えました。
1つの教科書ばっかりつかうとマンネリ化しますし、学生の間にも"Solution manual"(虎の巻)
が出回ってしまって、出席してないのに何故か宿題だけ全提出&100点!という輩が
存在してしまうからです。
3冊扱いましたが、日本の流体力学の教科書より全然分かりやすいです。
以下、紹介します。1.および2.がお勧めで、修士課程程度までなら、これで十分です。
1.Fluid Mechanics: Fundamentals and Applications
説明図や式展開も詳細で、かつ説明文も非常に分かりやすい名著だと思います。
初学者から、実務に携わる人まで、これ1冊でかなりのとこまでは理解できます。
ただ、うちの教授はこの本嫌いでね…早々に変えてしまいました。
2.Engineering Fluid Mechanics
この本も、なかなか良いです。機械工学系の本にしては珍しく、浮体静力学の話も一応
カバーしてあります。ただ、問題演習の解説が若干淡白で、不親切に感じるところもある
かもしれません。
3.Fundamentals of Fluid Mechanics
うちの教授は、えっらく気に入ってましたが、個人的にはダメダメです。
何がダメって、まず教科書のコンテンツの並びがダメ。
この順番で教えても、学生の理解は深まらんでしょ、混乱するだけでしょ…という並びに
なってしまっています。説明も、1.に比べたら雲泥の差で不親切。
演習問題も、何だかマニアックすぎて意味分かりません。
アメリカの教科書は一般的に、非常に親切で分量が多い。
なぜかというと、自習を前提にして作られているからです。
自習してきて、分からない部分を授業で復習する。授業は、自習前提で始まる。
だから、分かる奴はどんどん伸びるし、やってこない奴はガンガン落ちこぼれます。
よいシステムです。
日本も、そうすればいいのに。
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