2015年4月25日土曜日

アイオワ大学の図書館は超便利

 学生生活、研究生活を始めると、必要な資料を調べる機会が多くなると思います。
大学院時代から今まで、10年ちょっと研究者生活を送って、強く思うことがあります。
それは、

"必要な資料(情報)を、必要な時に、どれだけ早く集められるか"

のスキルは、なるべく早く身に付けておいた方がいいということです。
めちすけは、これを学部生の時、卒業研究を見てもらっていた先輩から言われました。
このことを、研究者としての人生を始める時に教えてもらえて良かった。

・研究に必要な参考文献、必要参照データ
・新しいプロジェクトを立ち上げる際の参考資料
・自分の研究の新規性、originalityなどを確認する時
・上司に、"ちょっとアレ調べて"と言われた時
etc, etc...

正しい情報を集めなければいけない場面は、いくらでもありますから。
情報を集める時、インターネットと図書館は良く使うと思います。
そういった時、アイオワ大学の図書館は本当に役に立ちます。
アイオワ大学には、学部や研究所毎に図書館があって、蔵書数も充実しています。



キャンパスの中央にあるMain libraryがその取りまとめ的な存在です。
Main libraryで、めちすけが良く使っていた機能は:

Interlibrary Loan

これが6年間通して、1番お世話になりました。
アイオワ大学に学籍があると、このサービスが使えます。
どんなサービスかというと、欲しい文献でかつ、アイオワ大学の図書館にあるか
どうか分からない文献を取り寄せてくれます。申し込みは,アイオワ大学図書館
(Main library)のウェブサイトより.(このblogにもかつてリンクを貼っていましたが、
不正アクセスっぽいのが多数来て、削除してます。お手数ですが、検索エンジン
からアクセスして下さい)

リクエストした文献が大学にある場合は、その文献が、学内のどの図書館にあって
借りられるか否かの情報が、メールで送られてきます。

リクエストした文献が大学に無い場合、全米の図書館ネットワークを通じて文献が
検索され、見つかった場合はPDFファイルで送られてきます。
長くても1週間程度で、大概の文献(1940年代とかでもOK)が見つかりますし、
PDFで送ってもらえるので非常に助かっていました。

② 日本語の書籍・映画などのDVD

アイオワ大学には日本語学科・芸術学部があるため、日本語の本や映画なども
豊富に揃っていて、Main libraryで借りることが出来ます。書籍に関しては、2階の
奥の方にアジア専門コーナーがありました。
昔は新聞もあったようですが、今は購読をやめているようです。

日本語の本が読みたい場合は、日本語学科の図書館に行けば、結構な種類の
本を借りることが出来ます。

③ 昼寝場所(Study Lounge 2001)

ここも2階の奥、アジア専門コーナーの横にあるのですが、非常に静かでソファーが
置いてある割には、人が少ないのです。
なので、昼ごはんを食べたり、その後寝たりするのに便利でした。

留学後、最初の秋学期は、めちすけにとって地獄でした。
ずっとオフィスにこもっていられないほどのストレスを感じていて、この部屋でよく昼寝
して、英気を養ってからBurlington bridgeを渡ったものです。


④ PC

ITCでは、学籍があればPCが使えますしWIFIも使えます。
ただ、殆どの学部は自前のメールサーバーを持っていて、容量も自前サーバーの
方が大学のよりも相当大きいです。
なので、可能であれば学部自前のメールサーバーを申し込むことをお勧めします。

Iowa Cityから行けるスキー場:Chestnut Mountain/Sundown

 アイオワは,平地です.ちょっとしたアップダウンはあっても,日本の感覚でいう
山は殆ど無いと思います.でも,山が無くても,谷があります.今回紹介するスキー場は,
山を下るタイプではなく,谷を降りるタイプのスキー場です.



Resortとか書いてあるけど、そんな大層なモンじゃありません。
一応、冬のスキーだけじゃなくて、春も秋もFamilyで楽しめますよ的な、そんな感じです。
場所はDubuqueというところにあって,Iowa Cityからは車で2時間程度です.
ただ,スキー場に行く時は大概冬で,かつ雪が降っていることが多いです.
安全にも気を配りながらなので,到着には約2時間半を見ておいた方が良いでしょう.

雪質は,やはり中西部の内陸で寒いだけあって,パウダースノーです.
雪質だけ見れば,日本の有名なスキー場(上越国際,安比高原,蔵王など)に引け
を取らないでしょう.(…と勝手に思っています)

ゲレンデは,そんなに広くないです.
谷の上にフロントやレンタル施設,駐車場,リフト乗り場などがあって,谷底に向かって
滑っていく感じです.
目の前にはミシシッピ川が広がっていて,雄大な光景が楽しめます.



リフト券の価格は大体20ドルから40ドル程度で,午後だけチケットだと少し割安だったり,
日本と同じようなシステムです.スキーウェアや板のレンタルもあるし,スクールもあります.
めちすけが行って,ちょっと意外だったことが1つあります.

寒すぎて,スキー場が途中から閉鎖になった.(2008年終わり頃)


マジです.
その日めちすけと友人は,久々にスキーでも行くかとChestnutに向いました.
出る時から,まあそれなりに風はあったけど許容範囲でした.

到着して滑っていると,どんどん気温が下がってくる.昼なのに寒い.
で,厚着しているのに皮膚がイタイ.
これは,ちょっとあまりにも寒いんでないかいと思っていると,場内アナウンス:

"気温が,有り得ないくらい下がってます.このままだと危険なので,今日は
スキー場閉鎖します.持っているリフト券は,払い戻します" 

ですって.
こいつが、実際に払い戻されたチケットです。初めての経験だったので、記念?
にチケットを取っておいたのです。


② Sundown Mountain Resort


Chestnut Mountain Resortに行くのとほぼ同じ道を辿っていけます。
Chestnutが州としては一応、Illinois州なのに対して、SundownはIowa州です。
ミシシッピ川の向こう岸か、こっち岸かの違いだけですね。

こちらも、ゲレンデの規模としてはChestnutと殆ど変わりません。
Iowa Cityから良く行くゲレンデ(主にDubuque方面)は、この2つだと思います。
勿論、ミネソタの方に行っても良いんですが、ちょっと時間が掛かるし日帰りは
しんどいかもしれません。

2015年4月20日月曜日

Iowa Cityレストランレビュー:日本食

 アイオワシティ,およびその近郊には,意外と日本食を食べられる店があります.
美味しいと感じるか不味いと感じるかは,人それぞれだと思うのですが…
でも,日本食を目にすること自体,ちょっと心が休まる一時だったりしませんか.

めちすけが居た時分は,日本食は贅沢品だと思ってました.
外食なんて滅多に出来ないし,スポーツをやっていた関係で体重を常にコントロール
しておく必要がありました.だから大抵自炊.(お金も浮くし)
料理が好きな人はいいんですが,めちすけは料理をメンドクサがるタイプです.
なので,7品くらいをローテーションして,それを食べ続けてました....
料理に関しては,向上心のカケラもありませんでしたな.

で,何かSpecialなことがあった日(友達の卒業とか,論文受賞とか)には,たまーに
日本食を食べに行きました.どんなところに行っていたか,ということを思い出して
みます.

1.Three Samurai


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Coralvilleにある日本食屋さんで,まあまあ美味しいです.
lunch timeに頼むことの出来る"Bento Box"は,日本で言うところの日替わり
ランチ的な感じで,量も結構あります.夜はパフォーマンス付きの鉄板焼き
なんかも,やっているみたいです.サービスも普通ですが,たまに有り得ない
ほど待たされることがあって,オーダーちゃんと通ってるか心配になることが
ありました.

2.Suhi PoPo


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Iowa CityとCoralvilleの境に近いとこにある,日本食屋さんです.
アメリカ人の友達は,ここのサーモンが絶品だと言っていたので,
試しに食べてみたら…超普通.予想はしていましたが,アメリカ人の舌は
あまりアテにならないなあと.結構皆さん,寿司を食べに行くんですね.

味は普通です.エダマメとか置いてあるけど,高いし冷凍だし.
ここは,洗濯物に乾燥機かけに行く時によく通っていましたし,むしろ
横にあるJava Houseのコーヒーとかパンの方が美味しいかもしれません.
ここのJava Houseで,就職試験のためのSPI対策をしたものです.

3.Oyama Sushi


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運転免許センターの近くにある"Sycamore Mall"の中にある,日本食屋さんです.
ここが1番まとも(味も値段も)だと感じました.
味付けは若干アメリカンなんですが,まあまともな日本食だと思います.
日本からお客さんが来て,"何か,日本食食べたいなあ"と希望があった時に
ごにょごにょ言い訳しながらも,連れてくることが出来るレベルかなと.

4.Asian Market (旧Aoeshi)


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日本食材等を買うことの出来るお店(旧East-West, 東西商会)の横に併設
されているレストランで,日本食と韓国料理を食べることが出来ます.
えー…日本食は,やめといたほうがいいかもしれません.(東西商会のおばちゃん,ゴメン!)
その代わり,韓国料理はおいしかったです.
というかむしろ,韓国料理を食べに行って下さい.

5.Takanami


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2003年冬に,Iowa Cityにオープンしたお洒落な日本食レストランです.

お洒落だからと言って,美味しいわけではないんだな.
多分,吉祥寺あたりの創作和食をイメージしてるんだと思うんですが,
レストランの雰囲気に味が伴っていません.
ソバの上に,焼いたチキンを丸ごと載せるとはどういうことだと.

ただ,Happy Hourというサービス時間帯に行けば,お寿司が少し安く
食べられたり出来るそうです.

番外編:Sushi Kitchen


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Old Capitol Mallの中にありまして,お寿司のtake outが出来ます.
めちすけが居たころは,働いているにーちゃん2人,えっらくmassiveでした.
ボディービルダーが寿司握ってる感じ.
良い人たちでしたけどね.お寿司も味も,実はSushi PoPoとかより美味しかったり.
ぶらっと立ち寄って,ちょっと高めのランチをするには良い店かなと.

ここまで書いて思いましたが,なんでどのレストランも,Googleの口コミがある程度
のスコア稼げてんだろう???

2015年4月12日日曜日

TAのお仕事②:Be Communicative!

 博士課程を修了する年度の12月まで、がっちりTAをやりました。
5-6年目の仕事ですが、3-4年目までの

・home work grading
・office hour
・lab assistant

に加え、

・review session

ってのが加わりました。いわゆる"補習"です。
うちの教授は如何せん、頭が良すぎた。
なもんで、当人は普通に授業をしているつもりでも、"置いてけぼり感"を感じていた学生
は少なからず居たようで、中間テストや期末テストが近づくと、授業内容の復習をして
ほしいという要望が届き始めた。

で、めちすけにお鉢が回ってきたわけです。
今思い返しても、このreview sessionを受け持ったことが相当に大きかった。
これを受け持ったお陰で、

・どう分からせるか、工夫する力
・限られた時間内に、確実に分からせるプレゼン能力

が鍛えられました。そして、めちすけが今でも心がけていること:

・Be Communicative!

不安がっているめちすけに、教授がいつも言ってくれた言葉です。
一方的な授業は、やっちゃだめだ。
常に学生が理解しているかどうか、確認しながらやれよ。
学生とちゃんと、対話するんだよ。Be Communicative!

卒業後今まで数え切れない程プレゼンしてきましたが、その教えを守っている…つもりです。

では、具体的にどんな方法を取ったか。
これまでのlab assistantで散々やってはきたものの、授業内容をきちんとレビューするの
はなかなか責任が重い。教授の授業に潜り込んで、教室の後ろの方で聞いていると、
確かに色々スッ飛ばしている。("分からないポイント"を、分かっていない感じ。。。)
確かに、すごくCommunicativeなんだけど、もう少し何とかなりそう。

なので、こんな感じで準備を心がけていました。

① 数式展開も、可能な限り全部書く。
② 可能な限り現象の可視化を心がけ、身近な例を用いて説明する。
③ 敢えて板書する。(アメリカの授業は、pptスライド授業が多い)
④ 板書の色を使い分ける。
⑤ 量より質を重視した問題演習とする。

③④⑤については、ほんとに日本の予備校スタイルで、キレイに分かりやすく板書して、
その板書のコピーを後で学生に配ったりしていました。

①②について以下に書きますが、ちょっとマニアックな内容ですから、読み飛ばして
もらっても大丈夫です…

①:例えば、NS方程式を簡略化して解析解を導く問題(2次元クウェット流れ等)では、
3次元のNS方程式から入り、2次元問題にして、境界条件を与えて…という流れを
全部式で追っかけます。つぶさに追っかけることで、授業中にスッ飛ばされていた部分
が埋まり(パズルのピースが埋まっていく感覚)、理解が深まります。

②:例えば、magnus effect と言っても、分からない人には分からない。
しかも、めちすけの英語力で、ガッツリ分からせる自信もあんまり無い。
なので、授業を受けていた学生に、アイオワ大学野球部が居たので

「フォーシーム・ファストボール、説明してくれ。何故打者の手前で浮くよ?」

と言う。いい奴だったから、照れながら説明しようとするけど、どうも曖昧。
流れの方向に対してボールが逆回転(バックスピン)すると、ボールの上側の
流れは下側の流れに比べ相対的に速くなり、結果としてボール上面の圧力が下がり、
揚力が発生、打者の手前で浮く。これを、何とか説明してもらうのです。

これだけじゃ不十分だから、magnus effectで揚力出たら、飛行機飛ぶよと言って
こんなの見せます。


風向きに対して,飛行機の上に乗っている玉を,どちらの方向に回転させる
かがポイントです.飛ぶんですねこんなので...
学生もマジカヨみたいな顔してますが、それが大事なんです。
堅い話ばっかだと疲れるので、最後にこれを見せたりします。
勿論、"magnus effectだけじゃ、説明は付かんよ"と念を押した上で。



ロベカルの35mミサイルです。2010年に、この軌道の謎が解明したみたいですね。
1997年のコンフェデ杯?かな。
めちすけ自身、これを見たときは震えました。
実際授業でこれを見せた時も、"んゴーーーーーール!!!"とか叫んで、若干引かれました。
アメリカでは当時、サッカーはあまり盛んじゃなかったですよ。。。
でも学生は、スゲェCoolと言って、少なくともこの現象に流体力学が絡むことは、納得して
くれました。

ある時など、圧力計の仕組みを解説をしている時、車好きの学生がいたので



"boost gauge、お前の車にも付いてるだろ"

って言ってみたところ、あ、あれか!みたいな感じで納得してもらったり。
そいつは日本の車もよく知っていて

"ハチロク"

とかポツリと言ったりするので、"日本では豆腐屋があれ乗るんだよ"とウソ吹き込んだり
してました。(そしてそれをウソと見抜かれたりね…)

工学というのは、理学よりももう少し、実用に近いことをやる学問です。
なので、学んだことがこんなところに生かされてるのか!と、いうことを常に意識しながら
勉強することが、学生にとっても教員にとっても、大切です。
目で見て覚えるからこそ、忘れにくいのです。

もう10年近く前の話で、当時の学生も20代後半-30代前半でしょう。
工学の道にどれだけ進んでくれたか分かりませんが、流体力学に関わる仕事をしている子
が居るとすれば、

"アイオワ大学の流体力学の補習、何か日本から来たTAいたな。んゴール!とか叫んで、
変な奴だった。あれ何だっけ、magnus effectの解説だっけ…"

って記憶が残っていてくれれば、TA冥利に尽きるんですけどね。

TAのお仕事①:流体力学を"教える練習"

 今回は、めちすけが経験したTAの、具体的な仕事内容について思い出してみます。
めちすけが6年間、一貫して受け持っていたのは、学部2年-3年生向けの流体力学
の講義でした。流体力学というのは、モノの回りの流れ(空気でも水でもいいです)を、
物理と数学を使って解く学問です。それが何に使われるのかというと、例えば水の中を、
出来るだけ水の抵抗を受けずに航走する船を造ったりする時に、非常に役に立つ学問
です。

この科目は、日本の大学で言うところの"必須科目"で、落とすと確か進級できないか、
卒業できないかでした。なので当然、受講する学生の数も多かった。多い時で、100名
近くいたんじゃないだろうか。

1年目:
TAのポジションを貰えたはいいものの、めちすけはまだ渡米して3ヶ月程度しか経って
いません。教授もそれを十分分かっていたため、めちすけに最初に与えられたTAの
タスクは、

・宿題の採点
・オフィスアワー

でした。宿題の採点では、学生が出してきた宿題を、grading criteria(採点基準)に沿って
採点していきます。grading criteriaは、head TAという所謂TAのボスみたいなのが作り、
それに沿って採点します。こうすることで、別々のTAが同じ宿題を採点しても、点数に差が
出ない。宿題の点数も自分の成績の一部となるので、学生にとってはシビアです。
日本だとあまり考えられませんが、宿題の採点に不満がある、とTAの元を訪れる学生も
いるくらい。

オフィスアワーでは、週の決められた時間(2日間程度、それぞれ2時間くらい)、TA専用
の部屋に詰め、そこで学生の質問に答えていきます。大体の質問が、宿題に関すること
なのですが、授業のここが分からん…という質問もあり、気が抜けません。
ここで、一応マンツーマンでなら、学生の質問にも答えられるようになるトレーニングを
受けた感じでした。

当時めちすけは学部卒業したてだったので、質問に来る学生さんと歳が一番近く、英語が
あまり話せないにも関わらず、なんだか仲良くなった覚えがありました。

教授、最初は心配だったんでしょうね。
僕がTAをしている横で、教授が見てるんです。
ならお前が教えろよと思っていましたが、そこはさすが教育者。
任せることも大事…と思い、敢えて手を出さなかったんだと思います。
彼は研究者としてだけでなく、教育者としても間違いなく一流です。
今、自分が準教授くらいの歳になって、改めてそう思い直しているところです。

2年目:
1年目でオフィスアワーを経験し、2年目からはそれに加え、Lab Assistantという仕事も
加わりました。簡単に言うと、授業の一環で学生に行わせる実験の手伝いをする、という
もの。この頃になると、少しだけ気持ちにも、悪い意味で余裕が出てきてたんでしょうね。
学生のバカな質問には、あまり答えなくなっていました。
書いてあるだろ、教科書もう1回読んでみろよ、とか。
でも、本当は答えてあげなくてはいけなかった。それでお金を貰ってましたからね。
反省点が多い1年でした。

3年目-4年目:
この頃になると、めちすけも博士課程に入っていて、それなりに英語も話せるようになって
いました。なので、授業(といっても、学生実習セクションですが…)のコマを任せて貰える
ようになりました。実は、これがきつかった。
100人程度の学生を、何グループ化に分けて、1日中実習をやらせるのです。

めちすけが担当した実習は、Introduction to Computational Fluid Dynamics (CFD)という
セクションです。パソコンを使って、流体力学の問題(例えば2次元翼回りの流れ等)を
解かせ、その考察等をレポートにまとめ提出させます。


当然、学生数分のレポートが出されますし、中にはパソコンがあまり得意ではない子も
居て、1日終わると(朝9時から昼食を挟み、晩の6時半くらいまで喋りっ放しです)、喉は
カラカラ、とてつもない徒労感で、それから自分の宿題等をやらなければいけなかったので、
憂鬱でした。8月後半-12月中盤までの辛抱だと思って、耐えていました。
でもそのおかげで、ある程度長い時間話さなければならない状況(集中講義とか)への
耐性が付きました。

しかし、教科書選びや中間テストの問題作成に携わったり、意見を求められる機会も増え、
この頃から"授業を一緒になって作り上げている"感覚が芽生えたことで、やれることは
しっかりやろうという意識に変わってきた覚えがあります。

ちなみに、使用する教科書は6年間で3冊変えました。
1つの教科書ばっかりつかうとマンネリ化しますし、学生の間にも"Solution manual"(虎の巻)
が出回ってしまって、出席してないのに何故か宿題だけ全提出&100点!という輩が
存在してしまうからです。

3冊扱いましたが、日本の流体力学の教科書より全然分かりやすいです。
以下、紹介します。1.および2.がお勧めで、修士課程程度までなら、これで十分です。

1.Fluid Mechanics: Fundamentals and Applications



説明図や式展開も詳細で、かつ説明文も非常に分かりやすい名著だと思います。
初学者から、実務に携わる人まで、これ1冊でかなりのとこまでは理解できます。
ただ、うちの教授はこの本嫌いでね…早々に変えてしまいました。

2.Engineering Fluid Mechanics



この本も、なかなか良いです。機械工学系の本にしては珍しく、浮体静力学の話も一応
カバーしてあります。ただ、問題演習の解説が若干淡白で、不親切に感じるところもある
かもしれません。

3.Fundamentals of Fluid Mechanics



うちの教授は、えっらく気に入ってましたが、個人的にはダメダメです。
何がダメって、まず教科書のコンテンツの並びがダメ。
この順番で教えても、学生の理解は深まらんでしょ、混乱するだけでしょ…という並びに
なってしまっています。説明も、1.に比べたら雲泥の差で不親切。
演習問題も、何だかマニアックすぎて意味分かりません。

アメリカの教科書は一般的に、非常に親切で分量が多い。
なぜかというと、自習を前提にして作られているからです。
自習してきて、分からない部分を授業で復習する。授業は、自習前提で始まる。
だから、分かる奴はどんどん伸びるし、やってこない奴はガンガン落ちこぼれます。
よいシステムです。
日本も、そうすればいいのに。

2015年4月2日木曜日

TAについて:それを経験する意義

 前回の記事で紹介したAssistantshipのうち,今回はTAについて紹介します.
TAを経験する意義は,計り知れないほど大きいと感じています.
TAの種類・担当する教科にも依ると思うのですが,TAの経験は

① プレゼンテーション能力が身につく.
② "分からせる"工夫が,自然と出来るようになる.
③ 質問等に対し,臨機応変に対応する力がつく
④ 自分も教育され,担当科目に対する理解が深まる

という点において,非常に有意義でした.
大言壮語を…と取られるかもしれませんが,めちすけは急な英語のプレゼン,かつ
時間が限られた状況を急に振られても,何の問題も無く乗り切る自信があります.
言語が違うだけですから,日本語での同じような状況にも対応出来ます.

6年(正確には,6年間の毎秋学期),TAのトレーニングを積み学生の相手をして
きたことで,上記①-④の力を付けることが出来ました.
以下,TAの経験が①-④の力となる経緯を述べます.

① プレゼンテーション能力が身につく
→学生数十名を相手にするわけです.そして,こちらの言っていることが分からなければ
容赦なく"分からん!"と言ってきます.授業時間は50分(だったかな?)と決まっている
ため,延長などしようものなら大ブーイングをくらいます.そもそも,授業数がそこそこに
多いため,延長してしまうと次のクラスに遅れるので,そんなことは基本,しちゃいかん
のです.

ブーイング食らわないように,分かりやすい説明を,時間内に出来るようにする.
これは社会に出てから例えば,

・顧客への説明
・学会発表
・課内会議
・自分が受け持つ授業

などに応用出来ます.

② "分からせる"工夫が,自然と出来るようになる.
→①とほぼ同じ理由です."分からん!"とクレームがつくだけでなく,アメリカの大学の
TAは,学期が終わる毎に"Teaching Evaluation"といって,学生から評価されるのです.
評価法は,学生がマークシート形式で

・言語能力は妥当か
・授業に対する準備は十分か
・分からせる工夫をしているか
etc...

について,TAが持つ各項目を5段階評価します.アイオワ大学では,そのマークシートは
データセンターに送られ解析され,雇い主-つまりその科目の主担当教授に届けられます.
主担当教授はその結果を見て,自分が雇ったTAがそのクラスに対し,きちんと仕事をして
いたかを判断します.Teaching Evaluationの結果が悪いと,解雇されたりします.
逆に結果が良いと,"Best TA"とか何とかで,学校から表彰されます.

これはかなり名誉なことで,特に大学院修了後にAcademic positionを目指す人にとっては
大きな武器になります.(履歴書に書けるから.)

③ 質問等に対し,臨機応変に対応する力がつく
→アメリカの学生は,非常に良く質問します.その質問内容も玉石混合ですが,光る質問
を投げかけてくる学生もいて,非常に勉強になります.
学生側も,ちょっと意地の悪い子なら,わざと質問してみて,その対応を見ています.
対応次第では,なめられてしまって話を聞いてくれなくなったりします.

なめられないためにはどうすればよいか.
単に厳しくするだけでは,"あのTAは厳しい"という評判が広がって終わりますし,一方的
です.ここは大学なわけで,学生は学びに来ている(と信じたいw)わけですから,その子
たちにsincereに対応するということは,質問されたことに対し,自分の力で正確な答えを
返してあげることです.

分からない時は,素直に分からないことを言い,次回までに調べてきてあげる.
変な見栄など張る必要は,全く無いのです.
これは,社会に出てから

・顧客対応する時
・学会発表の質疑応答
・自分が受け持つ授業で,質問が出た時

などに応用出来ます.

④ 自分も教育され,担当科目に対する理解が深まる
→何回も同じ内容を教えます.かつ,毎年同じ教科書は使わないし,試験問題も日本とは
異なり,毎年変えます.ここには絶対手を抜かない.
なので同じ内容を教えていても,毎年意外と新鮮ですし,学ぶことはたくさんあります.

・去年の教え方だと,理解力が今一つだったから,教える方法を変えよう
・この内容を教える前に,そのベースとなるあの内容を先に教えよう
・テストの問題を,もう少し実用に資するような内容にしてみよう

等々,自分も考えますし,学生から学ばされます.
めちすけが信頼する柔道のヘッドコーチが,いつも仰っています.

「教えることとは,学ぶことだよ」

本当にそう思います.